本記事は、前後編のうちの後編にあたる。未読の方は、まず【前編】をご覧いただきたい。
前編では、信用貯金の基本的な概要、すなわち信用貯金とは何か、その口座はどこにあるのか、そしてどのように開設されるのかについて説明した。
後編では、信用貯金の応用編として、信用がどのように貯まっていくのか、また減っていくのか、その概要やテクニックについてまとめていく。
信用貯金を貯蓄するのは他者である
前編のおさらいにもなるが、信用貯金の口座が開設される場所は他人の心の中である。
だからこそ、信用を口座に貯蓄するのはあなたではなくあなた以外の他人であることを意識しなければならない。
例えば、あなたが誰かに親切な行為をしたとする。その行為によって、相手はあなたに対して「信頼」や「尊敬」といった感情を抱くことになる。
これが、あなたに対しての「信用」であり、相手の心の中にある「口座」に貯まっていくイメージとなる。
もちろん、あなた自身にも自分が良い行いをしたという自分への信頼実績が積み重なることだろう。
しかし、信用貯金は相手の「口座」に貯まるからこそ、人間関係を円滑にする上で重要な役割を果たすである。
信用貯金は人によって貯まり方が違う
信用貯金は、あなたの一度の行動や結果に対して、複数の他者に対して同時に貯金をためることが可能である。
なぜなら、あなたの信用貯金口座を持っている(あなたを認識している)他者は複数存在しており、同時にあなたを見ているからである。
しかし、その貯まり方は人によって異なる。
信用貯金の貯まり方が人によって異なる理由は以下の通りである。
- 価値観: 相手が重視する「信用」のポイントが異なるため。
- 経験 : 過去の類似経験から、あなたの行動を判断する可能性があるため。
- 関係性: 親密度や立場によって、信用残高の初期値や評価基準が異なるため。
- 伝達力: あなたの意図や気持ちが、相手に十分に伝わらない場合があるため。
信用貯金の貯まり方が異なるイメージ

新システムの開発プロジェクト、予算もスケジュールも予定通りに完遂させました!
(これで僕は上司Bさんにも、先輩Cさんにも信用されるはずだ!)

本当に素晴らしい!期待以上の成果を出してくれましたね。
(彼は信用できる人材だ!またプロジェクトをお願いしよう)
信用貯金:増加大↗ 💰💰💰💰

A君、よく頑張ったと思うよ。お疲れ様。
(半分は俺が手伝ったんだけどね。彼はまだ1人前ではないな。)
信用貯金:増加小↗ 💰
信用貯金は減ることもある
信用貯金は日々信用を得る行動を起こしていれば少しずつ増えていくものだが、お金同様減ることもある。それは他者からみて、信用を失うような行為をした場合だ。
- 約束破り(言行不一致)
- 口約束であっても、一度した約束を破ることは、相手からの信頼を失う大きな要因となりえる。
例:遅刻、ドタキャン、嘘、責任逃れ
- 口約束であっても、一度した約束を破ることは、相手からの信頼を失う大きな要因となりえる。
- 利己的な行動(自己中心的)
- 自分の利益ばかりを追求する行動は、周りからの信用を失う。
例:出し惜しみ、裏切り、横柄な態度
- 自分の利益ばかりを追求する行動は、周りからの信用を失う。
- 無責任な行動(無計画・無実行)
- 自分の行動や言動に責任を持たない人は、信用を失う。
例:言行不一致、責任転嫁、無断欠席
- 自分の行動や言動に責任を持たない人は、信用を失う。
- コミュニケーション不足(意思疎通不足)
- 相手とのコミュニケーション不足は、誤解を生みやすく、信用を失う原因になる。
例:連絡不足、説明不足、一方的な態度
- 相手とのコミュニケーション不足は、誤解を生みやすく、信用を失う原因になる。
信用貯金が減るケースのイメージ

C先輩にお願いされた仕事、昨日終わってないといけなかったけど、報告して怒られるのもめんどくさいし、バレないかもだし、気づかれるまで黙っておこう。

A君に昨日まででお願いしていた仕事の報告がないぞ!
なんで事前に相談してくれないんだ!?
信用貯金:減少↘ 💸💸💸💸
信用貯金は引き出すことができる
信用貯金は銀行口座と同様、引き出すことが出来る。
信用貯金を引き出してしまうと、せっかく貯めた信用が減ってしまいあまりよくないイメージを持たれるかもしれない。
しかし、信用貯金の消費は必ずしもネガティブな行為ではない。この行為は時として非常に有効な手段となる。
信用貯金を引き出す行為は、意図して相手に貯まっている信用を消費して、自分の有利な結果を得るということだ。この行為は、人間関係における駆け引きや交渉を行う際に用いることが出来る。
人が人と関わる時には必ず期待値のずれや、落とし所を見据えた合意形成が生じる。この合意形成はビジネスシーンでも日常生活でも、至るところで発生する。
信用貯金をうまく引き出すことができれば、自分の期待に沿った結果、極端な話「自分100/相手0」という結果で相手と合意形成することも可能となる。
※ビジネスを円滑にする落とし所の考え方については以下の記事でさえずっているので参考にしてほしい。
信用貯金を引き出すイメージ①

ごめんなさい。お客様からBさん宛てに伝言預かっていたのに、1週間も忘れてました…。お客様が怒ってしまっています…。

A君は頑張ってて最近忙しいから、そういうこともあるよ。でも次からは気を付けてね。
信用貯金:消費↘ 💰💰💰💰 ➡ 💰💰💰💥
信用貯金を引き出すイメージ②

プロジェクトで大失敗をしてしまいました…。このままでは納期が守れません。
納期を1ヵ月延期させてもらえないでしょうか。

しょうがないやつだ。でもA君はいつも頑張ってくれていて信用も出来るから、今回は許してあげるよ。1ヵ月後の納期は守ってね。
信用貯金:消費↘ 💰💰💰💰 ➡ 💰💥💥💥
このように、信用貯金を消費することで、自己に有利な条件や合意形成を引き出すことが可能となる。
ただし、これはあくまで相手に対して自己の信用貯金が十分に蓄積されている場合に有効な手段である。
信用貯金が不足している場合は、期待した結果を得られない可能性があることは留意したい。
信用貯金は知らないうちに増減する
ここまで、あなたの行動によって相手の信用貯金が増えたり減ったりするという話をしてきたが、信用貯金はあなたが相手と関わっていない間にも増減する。
前編でも紹介したが、それはあなたの知らないところで他者同士のコミュニケーションが行われた場合に起こりえる。
信用貯金が知らないうちに増加するイメージ

A君、まだまだ未熟なところありますけど、伸びしろありますよ。

へ~、将来有望だね。今後一つ上のレベルの仕事にチャレンジさせてみようか。
(A君の)信用貯金:増加↗💰💰
信用貯金が知らないうちに減少するイメージ

A君、仕事終わってないのに報告も相談もなくて、指導が必要ですよ!

え!?A君この前私宛の連絡も1週間放置してたよ。ちょっとよくないなぁ…。
(A君の)信用貯金:現象↘💸💸
このように、信用貯金はあなたがその場にいない場合にも増減する。
その増減のきっかけはあなたの普段の行動であり、その結果があなたの知らない場所で噂され、評価されることで、自動的に増減する。
そのため、意図せず信用貯金を増やそうと思ったら、常に誠実で責任感のある行動を心がけ、周囲との良好なコミュニケーションを図ることが重要となる。
信用貯金を効率的に増加させる方法

信用貯金を効率的に貯めるには知らない間に増加させるパターンが一番良い。時として、自分の良い情報を各所で発信してくれる方に対して、積極的に自己アピールすることも重要だ。
ここまで信用貯金が増減するパターンや方法をいくつも紹介したが、その中でも一番効率的に自分の信用貯金が貯められるパターンは、他者があなたの知らない間にあなたの信用貯金を増加させるパターンである。
信用貯金のわかりやすい貯め方はあなたが相手の見える範囲で行動し、直接結果を見せる方法ではあるが、そのパターンだとあなたの周りにいる方のみの信用貯金しか増加しない。
一方であなたがその場にいない間にあなたの信用貯金を増加させるパターンは、必ずしも一か所で起きるものではない。
あなたの噂話や評価は、あなたを認識している相手であればいつでもどこでも行われる可能性があり、その数はあなたを認識している人が増えれば増えるほど、信用貯金の増加数も増えていく。
また、第三者による客観的な評価というものは、直接の自己アピールに比べて圧倒的に評価する側の評価点が高い。
第三者評価が自己アピールより優れている理由は以下のようなものとなる。
- 客観性:主観的な自己評価に対し、第三者の客観的な視点からの評価は信頼性が高い。
- 信憑性:言葉だけの自己アピールと異なり、具体的な行動や実績に基づいた評価は説得力がある。
- 多様性:自分では気づかない強みや魅力を発見できる可能性がある。
- 社会的証明:他者の評価は、その人の価値を証明する社会的証明となり、影響力が増す。
- 謙虚さ:自己アピールは過剰だと反感を買う可能性があるが、第三者評価は謙虚な姿勢を示すことができる。
このように、直接の自己アピールより第三者を介して評価してもらった方が、評価効率にも優れているのだ。
もちろん、自己アピールも自己表現、主体性、などの点で重要である。また自己アピールと第三者評価は、互いに補完し合う関係にある。
自己アピールで自分の魅力を伝え、第三者評価でその信憑性を高めることで、より効果的な自己PRが可能となる。
まとめ
前編に続き、後編では信用貯金の応用的な要素についてさえずってみた。
前後編を通じて説明してきた通り、信用貯金は目に見えない形で蓄積・消費され、人間関係を円滑にする上で重要な役割を果たす概念である。
信用貯金を効率的に貯めるためには、日頃から誠実かつ責任感のある行動を心がけ、周囲との良好なコミュニケーションを図ることが重要となる。