皆さんは、自身のキャリアを築く上で、ロールモデルとなる人物がいるだろうか?
もし、明確にロールモデルがいると答えられるならば、それは素晴らしいことだ。周囲の人々や職場環境に恵まれているか、自身のキャリアプランをしっかりと描けている証拠だろう。
しかし、世の中には、ロールモデルとなる人物が身近におらず、自身のキャリア形成に悩む人々も少なくない。先日、私自身も自社の若手社員から「ロールモデルとなる人物像が掴めず、キャリアアップの道筋が見えない」という相談を受けたくらいだ。
私も先日、自社の若手社員から「ロールモデルになる人のイメージが出来ず、どうキャリアアップしていきたいかのイメージがつかない」といったような相談を受けたところだ。
自身のキャリア形成において、ロールモデルの存在は非常に重要だ。今回は、ロールモデルとキャリア形成について、私の考えをさえずってみようと思う。
ロールモデルとキャリアの関係性
ロールモデルとは、一般的に自分の行動や考え方の模範となる人物のことを指す。ビジネスシーンにおいては、自身のキャリア形成や能力開発において、目標となる人物を指すことが多い。
例えば、皆さんの周りに「この人のようになりたい」と思える相手はいないだろうか?それは同じ会社の上司や先輩に限った話ではない、後輩でも、他社の社員の方でもよい。また周りの人でなくとも良い、テレビでよく見る有名人、歴史上の人物なども「この人のようになりたい」と思える対象となる。
もしあなたにそのような相手がいて、その相手を尊敬し、自分も同じような人になりたいと思ったとき、その人があなたのロールモデルになるだろう。
自分のロールモデルがどの様な人生を送ってきたのか、どのようなキャリアを積んできたのかを知ることは、自分のキャリアプランにおいて非常に重要である。
なぜなら、ロールモデルと同じ人生や経験を積むことが、自身が尊敬するロールモデルに近づくための近道となるからだ。
極端な話、ロールモデルのようになりたいなら、自身のキャリアプランをそのロールモデルとなる人物と同じプランにすればよい。
そして、そのキャリアプランを忠実にこなしていくことで、ロールモデルと同じ経験と実績を積むことができ、いつしか自身もロールモデルと同じキャリアを持つ社会人になっているだろう。
ロールモデルと同じキャリアを積むことは不可能である
しかし、ここで一つの問題に直面する。
ロールモデルと同じキャリアプランを描いたとして、多くの場合、ロールモデルと全く同じキャリアを積むことは不可能である。
という問題だ。
例えば、以下のキャリアをロールモデルにする場合を考えてみよう。

私は新入社員から3年間は技術職として設計/開発をやってました。
4年目になるころ、自社が技術営業(プリセールス)組織を新設するとのことで、役員から初期メンバーへの参画を打診され、4年目から3年間はプリセールスとして活動することになりました。
7年目に入ると、自身がプリセールスとして提案・受注した大型プロジェクトにどうしても参画しなければならず、プリセールス職を退任し、7年目から3年間ほどプロジェクトマネージャ(PM)を担当していました。
PMを務めるプロジェクトが落ち着き始めた頃、組織マネージャとしてチームを持つことになりました。ちょうどそのタイミングで技術部門の部門長が退職したため、10年目から空いたポストにつく形で部門長に就任しました。
実のところ、これは、私自身の実際のキャリアだ。
しかし、現在それなりのポジションに就き、大きな裁量を持つ私であっても、部下たちに全く同じキャリアを歩ませることは困難だ。
なぜなら、私の部下が私と同じキャリアを歩もうとする場合、以下のような偶然の要素が重なる必要があるからだ。
上記のように、偶然が重なる必要がある上に、当時と現在では会社の規模も社会環境も異なるため、同じキャリアを積める環境に巡り合うこと自体が難しいのだ。
いくらロールモデルがいたとしても、全く同じキャリアを積むことはほぼ不可能であると考えるべきだろう。
なお、私が上のキャリアを形成するにあたって、7年目~10年目辺りで実践していた経験については別で記事にしているため参考にしてほしい。
ロールモデルは”判断基準”
では、なぜロールモデルが重要なのか?
それは、ロールモデルが常に私たちの判断基準となってくれるからである。
社会で生きていく上で、私たちは日々、大小さまざまな判断を迫られる。判断に迷った時、上司や先輩に相談して決断を仰ぐこともあるだろう。
このような他者に判断基準を求める行為は、特に社会人経験の浅い時期には頻繁に起こり得る。そして、社会人として成長していく上で、有識者から判断基準を与えてもらうことは非常に重要なことだ。
では、上司や先輩に相談できない時や、相談するまでもない些細な判断が必要な時はどうだろうか?自身の内面に問いかけ、過去の経験から答えを導き出すことになるだろう。
このような時、ロールモデルの存在は非常に有効だ。「もしロールモデルならこのような時どう決断するだろうか?」という判断基準を得られるからだ。
その基準が自身の過去の経験と融合することで、現在の状況に合わせた判断や解答を導き出せる。
その結果、私たちは日々の判断、決断を通して、少しずつロールモデルに近づいていくことができるのだ。
ロールモデルは”いいとこどり”

もしあなたがロールモデルを見つけることができない場合、上司や先輩など多くの人を参考に、その人達の”いいところ”を見つけてほしい。その人たちの”いいとこどり”をし続けることで、気づけばあなたのキャリアは誰かのロールモデルになれるほどに積みあがっているだろう。
自身の判断基準となるロールモデルを持つことは非常に重要だ。しかし、冒頭で述べた私の部下のように、身近にロールモデルとなる人がおらず悩んでいる人もいるだろう。
そんな時、私は「周囲の上司、先輩、他社の社員、それぞれのいいところを見つけ、真似し、自分のものにしなさい」といったアドバイスをする。
これは言い換えると、「周りの人のいいとこどりをしなさい」というアドバイスだ。
ロールモデルとは、輝かしい成績や優れた実績を残した人のキャリアパスを指すと思われがちだが、実はそうではない。身近な上司や先輩、あるいは後輩であっても、全ての社会人が誰かのロールモデルになり得るのだ。
例えば、もしあなたが他者の過去の経験や実績に魅力を感じ、それを自分の目標とした瞬間、その人はあなたのロールモデルとなる。
極端な話、あなた以外の全ての人がロールモデルの対象になり得る。
もし、私の部下のようにロールモデルを見つけられないと悩んでいるならば、無理に一人に絞る必要はない。なぜなら、先述した通り、ロールモデルと全く同じキャリアを歩むことは不可能だからだ。
それよりも、周囲の多くのロールモデルの中から、自分が学びたい経験や実績を少しずつ取り入れ、自身のキャリアに積み上げていくことをお勧めする。
その時は、ただ誰かの真似をしているだけに感じ、自分固有のキャリアが積み上がっているようには思えないかもしれない。しかし、複数の人のいいところを取り入れた経験や実績が10も20も積み重なれば、それは間違いなくあなた自身のキャリアとなる。
複数の人の良いところを組み合わせているため、誰かのコピーになることもない。
そのようなキャリアを積み上げた時、ふと自身のキャリアを振り返ってみれば、誰とも被ることのない、自分だけのキャリアが築き上げられていることに気づくだろう。
そして、そのキャリアは周囲の人々にとって「ロールモデル」と呼ばれるものになっているはずだ。
これが、ロールモデルの正体である。
まとめ
以上が、私が考えるロールモデルとキャリアの関連性である。
明確なロールモデルがいる人はもちろん、見つけることが難しいと感じる人でも、ロールモデルを活用したキャリア形成は可能である。
ロールモデルの活用方法は”判断基準”と”いいとこどり”だ。
一人でも、複数でも構わない。周囲にいるロールモデルを見つけ、日々のキャリア形成に役立ててほしい。