我々が行っている日々の業務は、例えばメールの送受信や会議での意思決定など、一見複雑に見える活動も、全て点と線で説明できる。
なぜなら、我々が行う業務とは、全てモノやお金、情報の流れとその連携によって成り立っているからだ。
これは私が所属するIT業界に限らず、どの業界においても、個人事業や副業も含めた全ての「業務」に対して言えることである。
業務が点と線で説明できるという概念を理解することで、皆さん自身が通常行っている業務の本質を理解し、俯瞰してみることが出来るようになるだろう。
自身の業務の改善や効率化にもつなげることが可能だ。
今日はこの点と線を使って、皆さんの業務がどの様に説明できるのかをさえずっていこうと思う。
業務における点と線とは
業務における点と線は、リンゴの売買のようにシンプルな取引でも説明可能だ。
例えばリンゴを販売するリンゴ屋とそのお客さんがいた場合、そのやり取りをシンプルにまとめると以下のようになる。

この時、お客さんとリンゴ屋さんの間に以下のような流れが生まれている。
- 情報の流れ:リンゴが欲しいという情報がお客さんからリンゴ屋に流れる
- 情報の流れ:リンゴは100円であるという情報がリンゴ屋からお客さんに流れる
- お金の流れ:リンゴを購入するため100円というお金がお客さんからリンゴ屋に流れる
- モノの流れ:100円を受け取ったリンゴ屋からリンゴというモノがお客さんに流れる
この、情報・お金・モノが流れる矢印が『線(流れ)』であり、その流れによりリンゴやお金の受け渡しを行っているリンゴ屋やお客さんが『点(主体)』である。

点(主体)は、情報やお金、モノの受け渡しを行う場所であり、線(流れ)は、それらを繋ぐ道筋である。
私たちが行っている業務は、全てこの点と線で説明が可能だ。
お客様に商品を提案し販売するためのやり取り、機械製造工場が部品を仕入れて製品を組み立てるためのやり取りなど、そこには必ず作業や判断を行う『点(主体)』があり、情報やお金、モノが流れる『線(流れ)』が存在するのだ。
点(主体)が行う作業や判断、および線(流れ)の上を流れるものは、情報、お金、モノ、それぞれで以下のような内容となる。
対象 | 点(主体) | 線(流れ) | 流す手段 |
---|---|---|---|
情報 | 報告書作成、企画書作成、見積書作成、議事録作成、データ分析、データ蓄積 等 | 進捗状況、報告事項、見積依頼、注文、受注、発注、データ 等 | 電話/対面での会話、メール、チャットツール、グループウェア 等 |
お金 | 資金調達、投資計画、予算実績管理、両替、財務諸表作成 等 | 現金、証券、手形、ポイント、電子マネー、各種入金/送金/支払 等 | 現金支払い、クレジットカード決済、銀行振込 等 |
モノ | 製造、作成作業、システム開発、サービス開発 等 | 部品、製品、商品、サービス、システム、アプリケーション、エネルギー 等 | 納品、運送、運搬、郵送、手渡し、権利の譲渡 等 |
業務(点と線)は人単位まで細分化できる
リンゴ屋の例では業者とお客さんという関係性で点と線を説明した。これは言い換えると自社企業と顧客企業の間のやり取りが点と線で説明できると言い換えることが出来る。
しかし、この概念は会社間のやり取りに留まらず、自社内の業務においても同様に点と線で説明することが可能だ。
例えば以下のような先輩からの作業依頼も主体と流れで説明できる。

- モノの流れ:先輩から依頼された仕事のための資料が渡される
- 情報の流れ:完了目安時間の情報を先輩に伝える
- 情報の流れ:完了目安時間になって先輩が完了有無の確認を行う
- モノの流れ:完成した資料を先輩に渡す
このように、点や線は非常に細かい単位で細分化でき、最終的には人(従業員)の単位まで細分化することが出来る。
極端な話、人と人との間で情報・お金、モノを流し合う行為が業務だと言い換えてもよいと言える。
点と線は連鎖する
業務は二つの点(主体)を繋ぐ線(流れ)で捉えることができることを説明した。
実は、この点と線は、個々の業務だけでなく、組織全体の業務を繋ぐ鎖のようにも捉えることができる。
これは言い換えると、従業員通しが情報やモノ、時にお金を渡し合うことで業務が成り立っているということである。
業務は二つの点(主体)を繋ぐ線(流れ)で説明できるわけだが、点と点を繋ぐ線は一本ではない。点(主体)が存在する分だけ線(流れ)も存在する。
これは言い換えると、従業員通しが情報やモノ、時にお金を渡し合うことで業務が成り立っているということである。

例えば、商品の企画開発、製造、販売、顧客サポートといった一連の業務は、それぞれの担当者が点(主体)となり、情報やモノが線(流れ)となって繋がることで、初めて顧客に提供できる価値にまで仕上げることが出来る。
これは言い換えると、業務は連鎖するということだ。
業務というものは点と線の連鎖によって成り立っており、業務の連鎖は、企業活動の根幹を成していると言える。

点と線を連鎖し続ければ社会になる

社会は点と線のつながりで構成されている。
点の中で何が行われ、線の上を何が流れているかを俯瞰することで、業務全体の流れを把握することができ、ボトルネックの改善や業務効率化に役立てることが出来る。
社内の業務(点と線)を連鎖し繋いでいけばそれが一つの会社を構成することとなるが、この連鎖は全ての会社内で起こっている。
また、会社対会社でも点(主体)を介して情報、お金、モノのやり取りを行うことから、この連鎖は会社間でも起こるということである。
例えば、農家が野菜を生産し、それを運送業者が運び、スーパーマーケットが販売し、消費者が購入する。この一連の流れは、点(主体)と線(流れ)が連鎖することで成り立っている。
点と点の連鎖はその連鎖を繋げていけば会社と会社のつながりとなり、それらの会社はまた別の会社と繋がり連鎖を繰り返す。
つまり、点と線の連鎖を繰り返すことで社会になるということだ。

これらの点(主体)と線(流れ)の間では必ず情報・お金・モノのうちのどれかが流れている。
社会というものは、情報の伝達によりお金とモノを動かすことで成り立っているのだ。
まとめ
今回は、私たちの業務や社会を「点と線」というシンプルな概念で捉える考え方をさえずってみた。
日々の業務、点(主体)と線(流れ)の組み合わせで成り立っており、その連鎖は組織や社会を形作っている。
この視点を持つことで、私たちは業務全体の流れを俯瞰し、改善点を見つけ、効率化を図ることができきるだろう。また、社会全体の仕組みを理解することで、より良い社会作りに貢献することも可能となる。
ぜひ、皆さんも日々の業務や社会を「点と線」で捉え、新たな発見や改善に繋げてみてほしい。