リモートワークは、かつては一部の企業や職種に限られていた働き方だったが、コロナ禍を機に急速に社会に普及し、私たちの働き方にも大きな変化を与えた。
私が生業とするIT業界は、元よりリモートワークへの変化が緩やかに起きていたこともあってか、コロナ禍をきっかけに他業種以上の速さでリモートワークへの適応を終え、コロナ禍が落ち着いた今なおリモートワーク中心の働き方を主流としている。
私は旧来のオフィスワークと昨今のリモートワークをどちらも経験している人間だ。さらに言うなら、オフィスワークの時代からリモートワークの時代になる急激な変化も直に体験している。
今回は、私が実際に感じたリモートワーク環境におけるメリットとデメリットについて、さえずっていこうと思う。
リモートワークで得たメリット
私がリモートワークによって得たメリットは以下のようなものだ。
通勤時間が0になったことで使える時間が増えた
私にとっては、これが一番大きなメリットだと実感している。
私はオフィスワーク時代、住んでいた場所にもよるが、通勤には大体片道1時間前後の時間をかけていた。往復にすると約2時間前後の時間を、オフィスや客先への移動に使っていたのだ。
月の勤務日数を仮に20日とした場合、1日の移動にかける時間を往復2時間で計算すると、月に移動だけで40時間、年間では480時間もの時間をオフィスと家の往復のためだけに使っていたことになる。
この移動のためだけの時間が、リモートワークの普及によりほぼ0になった。
もちろん、リモートワーク中心になったからといってオフィスに全く出勤しなくなったわけではない。しかし、私は月の半分以上がリモートワークのため、削減できた時間は非常に大きい。
私は仕事であれプライベートであれ、人生で自由に使える時間を大幅に増やすことができた。
移動時間がなくなり、仕事の生産性が向上した
オフィスや客先への移動時間がなくなるのは、出勤退勤時だけではない。業務時間内の移動も大幅に減少した。
オフィスワーク時代は、顧客やパートナー企業との会議は対面が主流だった。もちろん、リモート会議という手段がなかったわけではないが、多くの企業ではリモート会議用のアプリケーションが導入されておらず、電話会議がせいぜいだった。
そのため、顧客やパートナー企業との会議を行う場合は、自社に来てもらうか、相手先を訪問する必要があった。特に営業職など、客先訪問が多い社員は、日々客先から客先へと移動と会議を詰め込むのが日常だったと記憶している。
この移動時間も、1日にこなせる業務量を圧迫する要因となっていた。近場の客先訪問であればまだ影響は少なかったが、出張を伴う遠方の顧客との会議が必要な場合は、それだけで1日が終わってしまうこともよくあった。
しかし、リモートワークが普及した現在では、多くの企業でZoom、Microsoft Teams、Google Meetなどのリモート会議用アプリケーションが導入されている。
これにより、元々リモートワークに抵抗が少なかったIT業界だけでなく、様々な業界でリモート会議が一般的になり、移動せずに会議を行うことが可能になった。
結果として、業務時間内に必要だった移動時間が大幅に減少し、1日にこなせる会議の数が増えたことで、従来は時間を要した商談や会議スケジュールの調整が大幅に短縮された。
その結果、業務の生産性が大幅に向上したと実感している。
プライベートの生活の質が上がった
業務時間外の自由時間が増えたことで、プライベートの生活の質が向上したと実感している。
これまでは、満員電車に揺られてオフィスへ移動し、約8時間の業務を終え、また同じ時間をかけて帰宅するという日々の繰り返しで、平日は常に疲れていた。
家に帰っても家事をする気力は湧かず、平日は最低限の食事、入浴、自由時間を過ごすのが精一杯で、家事は週末に先送りにすることが多かった。また、業務が長引き帰宅が遅くなった日は、最低限の食事、入浴、自由時間を確保するために、睡眠時間を削ることもよくあった。
しかし、リモートワークが主流となった今、リモートワーク日は業務終了と同時に帰宅が完了する。これまでの移動に使っていた時間は全て自由時間となり、移動による疲労も全く感じることがない。
そのため、平日でも家の掃除や片付けなどの家事に時間を使えるようになった。さらに、通勤による疲労がなくなり、自由時間も睡眠時間も十分に確保できるようになったことで、確実に生活の質が向上したと実感している。
リモートワークで生じたデメリット
私はリモートワークにより様々なメリットを得ることが出来たが、同時にデメリットも生じたと感じている。私がリモートワークで生じたと感じるデメリットは、以下のとおりである。
社員とのコミュニケーションが大幅に減少した
業務環境がオフィスからリモートに移行したことで、社員とのコミュニケーションが明らかに減少した。
社員とのコミュニケーション不足は、組織を管理する上で大きな課題となる。
オフィスワーク時代は、出社すれば同じフロア(建物)に必ず社員がいた。客先訪問や常駐でオフィスにいない社員もいたが、それは少数であり、基本的にはオフィスに行けば誰かと顔を合わせることができた。
顔を合わせたからといって必ずしも会話をするわけではないが、仕事ぶりやチーム内のコミュニケーションなど、仕事中の雰囲気を把握することができた。組織管理において、このような状況把握は非常に重要だと私は考えている。
例えば、プロジェクトチーム内でトラブルが発生していないか、ハラスメントに繋がる問題が起きていないか、体調不良を押して出社している社員はいないかなど、直接会話をしなくても、同じ場所にいるだけで多くの情報を得ることができた。
リモートワーク環境では、これらの情報がほとんど得られなくなった。これは組織を管理する上で大きなデメリットだと感じている。
リモートワーク環境になってから、1年以上顔を合わせていない部下が複数名いる。日々のリモート会議で会話する社員はまだ良いが、カメラをオフにしたまま会議に参加する社員も多く、声は聞こえても顔を見ない期間が数ヶ月に及ぶ社員もいる。
会社は組織的にリモートワーク環境下でのコミュニケーション改善に取り組んでいるが、オフィスワーク時代のような状況把握には及ばない。
リモートワーク環境になったことで、組織管理の難易度が大幅に高まったと感じている。
仕事とプライベートの境界線が曖昧になった
私にとって、これはそれほど大きなデメリットではないが、仕事とプライベートの境界線が曖昧になったのは事実である。
オフィスワーク時代は、勤務時間中にプライベートの予定が入ることはほとんどなかった。
もちろん、休憩時間に休日の予定を考えたり、帰宅後の予定を想像したりすることはあったが、あくまで計画を立てるだけで、勤務時間中にプライベートの予定をこなすことはなかった。
しかし、リモートワーク環境では、勤務時間中でも隙間時間(休憩時間)に家事などのプライベートな用事を済ませることができる。
例えば、郵便物が届いたら受け取ることもできるし、昼食時間を早めに切り上げて食器を洗うこともできる。会議と会議の間に少し時間があればお風呂の掃除をしたり、子供がいる家庭であれば子供の帰宅時間に合わせて会話を交わし、宿題を見てあげることも可能だ。
リモートワーク環境では、職場と家庭の距離が物理的に近くなる。
そのため、仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、仕事の合間にプライベートの予定を組み込みやすくなる。
体力が低下した
このデメリットは、リモートワークによるものか、加齢によるものかは不明だが、リモートワーク環境になってから体力が低下したのは間違いない。
それは当然のことだ。リモートワーク中心になってから、私はほとんど体を動かさなくなったからだ。
オフィスワーク時代は、私は比較的移動が多い仕事をしていた。
デスクで資料を作成することもあったが、基本的には客先会議、社内打ち合わせ、外部セミナーへの登壇や参加など、自席を離れている時間の方が多かったし、出張で一日中外出する日も頻繁にあった。
しかし、リモートワーク中心になった現在では、顧客との会議も、社内打ち合わせも、全て自宅の仕事部屋で完結する。外部セミナーへの登壇も、Webセミナーが普及したことで自宅から配信できるようになった。
その結果、外出する機会が激減し、一週間自宅から一歩も出ない週もあった。
オフィスワーク時代は、出勤・帰宅、客先訪問、社内の会議室間の移動などで、意識せずとも毎日1万歩近く歩いていたと思われる。しかし、リモートワークの日は、業務後に外出しないと1日の歩数は数百歩程度だ。
私の体力は、オフィスワーク時代から明らかに低下したと感じる。
まとめ

リモートワークにより働き方の選択肢が増えたのは、間違いなくメリットだ。しかし、どちらか一方だけを選ぶとデメリットも生じる。オフィスワークとリモートワークは、選択できるからこそ良いのだ。どちらかに偏るのではなく、職場の状況や業務内容に合わせて、柔軟に働き方を選ぶことが重要である。
以上が、オフィスワーク時代からリモートワーク時代への変化を通して感じたメリット・デメリットである。
私にとって、リモートワークにより自由な働き方を選べるようになったのは確実にプラスであり、オフィスワーク時代よりも仕事の生産性は向上したと感じている。
しかし、同時に失ったメリット(デメリット)も確実に存在する。
オフィスワークとリモートワークは、どちらか一方が優れているというものではない。選択できるからこそ良いのだ。
どちらか一方しか選ばなければ、確実にデメリットが生じるが、状況に応じて選択すれば、デメリットを最小限に抑え、メリットを最大限に得ることができる。
皆さんも、どちらか一方の働き方に固執するのではなく、状況に応じて働き方を切り替えることを、私は推奨する。
私の会社では最近、営業部の社員がスーツではなく私服(オフィスカジュアル)で出勤しているのを時々見かける。オフィスワーク時代は、日々の客先訪問や急な来客に備えて、営業社員は常にスーツ姿だった。しかし、現在では多くの対面会議がリモートで実施できるため、営業職にもリモートワークによる変化が起きていると感じる。