皆さんは「信用貯金」という言葉をご存知だろうか?
「信頼貯金」という言い方もされるが、同じ意味と捉えていただいて構わない。
信用貯金という概念は、スティーブン・R・コヴィー博士の著書「7つの習慣」に登場する「信頼残高」という言葉が語源になっていると言われている。
この信用貯金は、社会において自身の他者評価を高めていく上で非常に重要な考え方であり、この考え方を知っているか否かで、他者から受ける評価の向上度が大きく変わってくる。
今回は、社会でうまく他者からの評価を得るための信用貯金という概念についてさえずっていこうと思う。
なお、自己評価と他者評価の違いについては、以下の記事で詳しくまとめているので参考にしてほしい。
信用貯金とは?
信用貯金とは、簡単に言えば日々の行動によって、周りの人からの信頼を得ていくことである。
- 約束を守る
- 誠実な態度で接する
- 困っている人を助ける
- 感謝の気持ちを伝える
- 相手の意見を尊重する
- 陰口を言わない
- 失敗を素直に認める
等々の行動を積み重ねることで、まるで銀行口座にお金を預けるかのように、少しずつ信用が蓄積されていくというのが信用貯金の考え方だ。
「信用」が「貯金」されるという表現に馴染みのない方もいるかもしれない。だからこそこの概念を理解しやすくするために、信用貯金の説明はしばしば信用をお金に置き換えて説明がなされる。本記事でも、信用をお金と考えて読み進めていただければ、理解が深まるだろう。
信用貯金の口座はどこにある?
信用貯金は貯金というだけあって、貯金をするための口座が存在する。ではこの口座はどこにあるのか?
結論から言うと、信用貯金の口座は他人の心の中にある。
想像してみてほしい。あなたは誰かのことを「信頼できる人だ」と思っているとする。その時、あなたの心の中には、その人専用の目に見えない銀行口座が開設されているようなものだ。そして、その人が誠実な行動や言動を積み重ねるたびに、その口座には「信用」というお金が貯まっていく。
逆に、その人が約束を破ったり、不誠実な行為をしたりすると、口座から信用が引き出されていく。残高がゼロになれば、当然のことながら、あなたはもうその人を信頼することはできないだろう。
重要なのは、この信用貯金口座は、あなたと関わる全ての人々の心の中に存在するということだ。家族、友人、同僚、取引先、近所の人… あなたが関わる全ての人々が、あなた専用の信用貯金口座を持っている。
信用貯金口座はいつ開設される?
もちろん、全ての他者が初めからあなたの信用貯金口座を開設しているわけではない。信用貯金口座は、他者があなたを認識したタイミングで自動的に開設される。
会社に入社して初めて同期入社の社員と話した時、上司や先輩に初めて挨拶に行った時、お客様と名刺交換をした時、自己紹介をした時、等々他人と接点を持ったタイミングで、相手の心の中に口座が開設されるのだ。
また、信用貯金口座というものは、あなたの知らない他人にも開設されることがある。それは他者があなたの知らない他者にあなたの情報を伝えた時である。
例えば、噂話が分かりやすい。人間社会では、あなたの知らないところでも他者同士の様々なコミュニケーションが行われている。そんな日頃の他者間のコミュニケーションの中で、あなたがいない間にあなたの話題になり、あなたを知らない誰かがあなたを認識することはしばしばある。このようなタイミングで、あなたの知らない他者の心の中にあなたの信用貯金口座が開設されてしまうのだ。
またビジネスにおいては、あなたが人事評価や業績評価を受けるタイミングで、あなたの知らない他者に口座が開設されることもある。例えば、業績評価や昇給審査のタイミングで、あなたの先輩や上司があなたの評価を人事部や役員に報告することになる。その時、あなたはあなたを評価する上層部の方に認識され、評価者に対して信用貯金口座が開設されるだろう。
このように、様々なタイミングで、あなたの知らない他人の心の中にあなたの信用貯金口座が開設されてしまうのである。
信用はどうやって貯金する?
それでは他人の心の中に出来た口座にどうやって信用を貯金していくのか?その方法は様々にある。
約束を守る
小さな約束でも、必ず守る。
「〇〇日までに△△をする」
「〇〇時に待ち合わせよう」
口約束だけでなく、期日や時間を明確にすることで、相手は安心してあなたを信頼することが出来るだろう。
誠実な態度で接する
誰に対しても、誠実な態度で接する。
- 嘘をつかない
- ごまかさない
- 言い訳をしない
誠実な態度は、相手に安心感を与え、あなたへの信頼へと繋がるだろう。
困っている人を助ける
困っている人がいたら、できる範囲で手を差し伸べる。
- 荷物を持ってあげる
- 道を案内する
- 話を聞いてあげる
親切な行動は、相手に感謝され、信頼を得るきっかけになるだろう。
感謝の気持ちを伝える
感謝の気持ちは、言葉や態度で伝える。
「ありがとう」
「助かります」
感謝の気持ちを伝えることで、相手との良好な関係を築き、信頼へと繋がるだろう。
相手の意見を尊重する
相手の意見を尊重し、耳を傾ける。
- 相手の話を最後まで聞く
- 相手の意見に反対する場合でも、頭ごなしに否定しない
- 相手の立場に立って考える
相手の意見を尊重することで、相手は「この人は私のことを理解しようとしてくれている」と感じ、信頼へと繋がるだろう。
失敗を素直に認める
誰でも失敗はするものだ。
失敗した時に、ごまかしたり言い訳したりするのではなく、素直に認めることが大切である。
誠実な態度は、周りの人からの信頼を得る上で非常に重要となる。
言葉と行動を一致させる
どんなに綺麗な言葉を並べても、行動が伴わなければ意味がない。
「言うは易く行うは難し」
言葉だけでなく、行動で示すことが、信用貯金を増やす上で最も重要なことだ。
以上のような日々の行動の積み重ねで、信用貯金は少しずつ増やしていくことが出来る。
信用貯金は一朝一夕で貯まるものではない。小さなことでも、コツコツ続けることが大切である。
信用貯金の残高は目に見えない

信用貯金口座の残高は目に見えない。目に見えない残高を如何に正確に把握し、信用残高がいくら残っているのかを管理することが重要である。
信用には口座があり、貯金する方法はご理解いただけたと思うが、信用貯金には一つ厄介な点がある。それは、信用貯金の残高は目には見えないということだ。
通常の銀行口座に貯金しているお金の総額は、通帳や銀行アプリなどを使えばすぐに残高が確認できる。また、その残高も具体的な金額になっており、今自分の口座に預けている金額の大小を正確に確認することができる。
一方、他人の信用貯金口座に預けているあなたの信用は、目で見ることができない。信用という概念は、他人から信頼される度合いであり、それ自体を数値で表すことができないからだ。
とはいえ、信用貯金口座と貯蓄されたあなたの信用は、目には見えないだけで確実に存在する。
目に見えない信用貯金の残高をいかに正確に把握し、残高管理していくかが、信用貯金においては非常に重要なポイントとなる。
まとめ
信用貯金についてさえずりたいことはまだまだあり、前編・後編に分けることにした。
前編では信用貯金の基本的な内容や概要、信用貯金とは何か、その口座はどこにあるのか、そしてどのように開設されるのかについて説明をした。
信用貯金は、目に見えないものだが、私たちの社会生活や人間関係に大きな影響を与えている。日々の行動の中で、少しずつ信用貯金を積み重ねていくことが、豊かな社会人人生を送る上で非常に大切だ。
次の後編では、信用貯金が増減するロジックや増やし方など、より応用的な内容について解説していきたいと思うので、ぜひ後編も読んでほしい。